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TSLPのお話からはじめましょう

Abrax社のテクノロジーは胸腺間質リンパポエチン(通称TSLP)と呼ばれるサイトカインが中心となっています。TSLPはビタミンD3による刺激で皮膚のケラチノサイトから産生されます。Abrax社の共同創業者である上林拓博士は、TSLPが制御性T細胞を増加させることを発見し、MC903などのTSLP増加剤による自己免疫疾患や炎症性疾患の治療における有効性を研究しています。

さらに最近では、上林博士はTSLP増加剤が、正常または肥満マウスにおいて白色脂肪組織(内臓脂肪及び皮下脂肪)を極めて強固かつ選択的に消失させる事実を発見しました。この脂肪減少のメカニズムは、皮膚から皮脂というエネルギーに富んだ物質が分泌されることによって起こるもので、皮脂が高カロリーであることから、その過剰分泌が脂肪細胞の減少に繋がり、2型糖尿病などの肥満関連疾患に多大な影響を与えることを明らかにしました。

さあ、解説しましょう

人間の皮脂は脂質で構成されており、皮膚の毛包に付随する皮脂腺から分泌されています。皮脂は、皮膚を保湿し、皮膚のバリア機能を高め、より健康的な皮膚環境を促進しています。したがって、MC903が作り出すTSLPによる皮脂分泌の促進は、湿疹や皮膚老化、脱毛症などの皮膚バリア機能の低下を改善するという結論に至りました。

Abrax社のリード開発プログラムは、外用TSLP増加剤であるMC903が、ヒト被験者および患者において皮脂ならびにマイバム分泌の増加を誘導することの概念実証を迅速に確立することを目的としています。

MC903は、乾癬治療薬としてFDAに承認されている薬剤であり、優れた安全性プロファイルを有していることから、改質対象として魅力的でありました。そのMC903の外用により、皮脂の過剰分泌を誘導し、湿疹の患者の皮膚バリア機能を改善することが期待できるのです。このコンセプトにおいて、Abrax社は、2024年初頭にオーストラリアでヒトを対象とした臨床試験を行う予定です。

さらなる明るい未来への応用:Abraxの挑戦

TSLPは様々な疾患や症状に影響を与えるという事実を踏まえ、Abrax社は他の適応症への応用を拡大する明確な計画を持っています。例えば、目からはマイバムと呼ばれる皮脂様物質が分泌されており、マイバムは涙液の外装を形成する役割を担いながら、目の前面から涙の蒸発を抑えています。弊社の応用では、TSLPがまぶたの内側でマイバムを産生するように誘導し、ドライアイの状態を改善させることができるものとしています。さらに、マウスでの試験において、MC903の投与は、皮脂のトリグリセリド含有量を強固に増加させ、血清トリグリセリドを低下させ、脂肪組織の減少を引き起こすことがわかりました。これらの発見に基づき、Abraxは現在、高トリグリセリド血症およびその他の脂質代謝異常症への応用の可能性にも期待しています。

また、将来的には、肥満症、2型糖尿病、自己免疫疾患(多発性硬化症など)、アレルギー性疾患、非アルコール性脂肪肝炎などを適応症としたパイプラインを予定しています。