共同創業者である上林拓博士の研究が学術誌Scienceで発表されました

株式会社Abrax Japan(以下、Abrax)の共同創業者で最高科学顧問(Chief Scientific Advisor)である上林拓博士(米国ペンシルベニア大学)は、2021年7月30日、胸腺間質性リンパ球新生因子(通称TSLP)というサイトカインの治療応用の可能性に関する画期的な研究成果を学術誌Scienceに発表しました。

上林博士は、本研究において肥満型マウスにおけるTSLPの増加が白色脂肪組織の減少を誘発する可能性があることを発見しました。白色脂肪組織の過度な蓄積は、糖尿病、心血管疾患、および脳卒中のリスクを高める可能性があるとされています。研究では肥満マウスにおけるTSLPレベルの増加が、中性脂肪を減少させ、血糖値と空腹時のインスリン抵抗性を改善させました。さらにこの白色脂肪組織の喪失は、皮膚で生成される皮脂の分泌の増加によって引き起こされていました。

Abraxの共同創業者兼CEOである成田譲氏は、この上林博士の業績を称賛し次のように述べています。

「上林博士の先駆的な発見が世界最高峰の学術誌であるScienceに掲載されたことを大変嬉しく思います。この研究は、今後TSLPの治療効果の基盤となり、多くの疾患の治療に多大な影響を及ぼすものと考えています。この先駆的な研究は、すぐにNature Reviews Immunologyにも掲載されており、その影響力の大きさを物語っています。上林博士の類まれな本研究と発見は数千万人のアトピー性皮膚炎患者の治療のためにAbraxが新しく開発した製剤「ABX-919」の成功の強い裏付けとなります。さらに、この研究を元にAbraxのTSLPを軸としたプラットフォーム技術は、さまざまな疾患や病状に対し、新しい治療法を提供できると確信しています。」

現在、Abraxは皮膚からTSLPレベルを全身に増加させることができる「ABX-919」と呼ばれるスプレー薬の開発に注力しています。さらにアンドロゲン性脱毛症、高中性脂肪血症なども対象疾患として初期開発が進めれています。「ABX-919」開発の一環として、2022年の初めにアトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験がオーストラリアで実施される予定です。

**本件にある論文はこちら(Kambayashi Labサイト)から「Free Access Link」をクリックすることで読むことができます**

  • Science (学術誌サイエンス)

Thymic stromal lymphopoietin induces adipose loss through sebum hypersecretion

https://science.sciencemag.org/content/373/6554/eabd2893

  • Nature Reviews Immunology (学術誌ネイチャー・ネイチャーリビューイミュノロジー)

TSLP uses up fats to coat the skin

https://www.nature.com/articles/s41577-021-00612-0

  • Penn Medicine News (ペンシルバニア大学ニュースリリース)

Mice Treated with This Cytokine Lose Weight by ‘Sweating’ Fat

https://www.pennmedicine.org/news/news-releases/2021/july/mice-treated-with-this-cytokine-lose-weight-by-sweating-fat

  • The Philadelphia Inquirer (米国新聞 フィラデルフィア・インクワイヤラー

These obese mice lost weight by ‘sweating’ their fat, Penn team finds

https://www.inquirer.com/health/obesity-lose-weight-sweating-fat-immune-covid19-20210730.html

アトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎は、患者の生活の質に影響を与える幅広い臨床症状を伴う慢性炎症性皮膚疾患です。一般人口において約25%の子供と2〜3%の成人がこの病気に冒されています。臨床症状には、激しい掻痒、紅斑、皮膚の乾燥、滲出および痂皮形成が含まれます。主な症状はそう痒症であり、幼少期に現れ、喘息などのアレルギー性疾患に先行することがよくあります。

現在の治療法は、環境刺激やアレルゲンへの曝露の低減、皮膚の保湿、かゆみの局所制御を中心としたライフスタイルの変更に基づいています。アトピー性皮膚炎では複数の局所療法が使用されており、局所抗炎症治療(コルチコステロイド)、カルシニューリン阻害剤(ピメクロリムス、タクロリムス、クリサ​​ボロール)、そして経口抗ヒスタミン療法が用いられています。しかし、米国食品医薬品局(FDA)はこれらの医薬品の幼少期や青年期での使用において、安全性に対する懸念を示しています。

ABX-919について

ABX-919は、乾癬用に商業的に承認された製品を基に再開発された薬剤であり、米国FDA下での505(b)(2)を基とした承認プロセスを利用して迅速な承認を目指すことができます。ABX-919はアトピー性皮膚炎の治療のために皮膚投与されるスプレー剤として特別に処方されます。

Abraxについて

Abraxは2020年に設立され、ペンシルベニア大学の上林拓博士による基礎研究の商業化に注力しています。TSLPとその医療応用への真の価値に注目したCEOの成田譲氏は、上林博士と提携し、東京に日本法人である株式会社Abrax Japanを設立しました。Abraxは、初期の開発活動をサポートするために民間投資家からのシード資金を通じて約200万米ドル(約2.2億円)を調達し、現在、さらなる開発と製造、および今後の臨床試験を推進させるためにシード4の資本で250万米ドル(2.75億円)を調達しています。

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